melophobian

安川奈緒の現代詩手帖掲載詩などを写経のように書き写す。

「ボンボン ボンボン スイート」安川奈緒

くるしいのに飴玉だけはあるんだ

どうしても これほどまでに こ

ころがはなれたことは ないから

ようやく それは遅すぎもしたし

ときに 早すぎもしたが 若者の

夜がきた 「どうか なにもしな

いで いきてゆけますように」

 

やわらかいパンとあまいジャムを

食べて 口を拭った 足から腐っ

ていることは わかっているから

「禁煙したんですよ」と飴玉を見

せて笑った これから葬式にいか

なければならない

 

学校いやですね

 

宇宙にくわしいひとが隣に住む

ちがう生活が 神社やスーパーで

の接触を生む 本をとりだす手も

「もうおしまいだ」 知らないひ

とに飴玉をもらった

 

話題が言葉から舌のことにうつっ

たのがつらい くるしいのに飴玉

だけはあるんだどうしても とい

う学生がいて 好きだった おま

え誰だよ おまえ誰だよ それが

聞きたかった とうとうすべてが

駐車場に見えるときがきた