melophobian

安川奈緒の現代詩手帖掲載詩などを写経のように書き写す。

「週末のおでかけ/yourface」安川奈緒

他人の住所を

まずいところに書き込んだ

そのあと走って

映画館に駆け込み

すばやく感想を言えた

「いい映画だった

     すみずみまで希望がなくて」

お前の顔は裏返ってる

雨かと思った

 

ももいろの服を着た男の人たち

女の人みたいに

胸をふくらませて

サイコウだ

「ぼくらはまっすぐ家に帰ります」

 

おまえの肌はほんとひどいな

さんざんな生活があらわれている

そのせいで

こっちは夢をみてしまう

おまえの腕がもげること

おまえの家族がだめになること

そのあいだにもロックスターが

布団をとびだし

電車に乗って

ウェントアウト フォアザウイークエンド

 

どうやって耐えるのか

びんかんな右の耳に

「あそびにいこうよ」

穴のあいた左の耳に

「しんでほしいよ」

棒をふりまわし怒る機会もあるだろう

でもここは電車だから

かなり大声でひとりごとを言った

(ばーか ばーか)

そのあと

にやりとしてしまった

(プールでの出来事を思い出したんだ)

あやしいか

もう取り返しがつかないか

隣の車両へ逃げればいいか

でも 隣の車両は

 

全員で狂っている

陳腐はさけられない

おまえの顔はほんとにキレイだ

雨かと思った