melophobian

安川奈緒の現代詩手帖掲載詩などを写経のように書き写す。

「あなたは夏 わたしは赤面の貧しさ」安川奈緒

明日もあさってもそうめんしか食えない

部屋に一人でいることを認めるのは

(金がないことを認めるのは)

勇気がいるから

記憶の寺、遊園地、学校、交通をたどり

そこにはあなた やさしい男

金があればあなたが買える

 

賽銭を遠くからブチ込んだあなた

女とアイスを分け合ったあなた

戦後政治思想4に出席しているあなた

電車の窓を開けてまわるあなた

痴漢のあなた

電車の窓を閉めてまわるあなた

天神橋筋六丁目で降りるあなた

(特にあなた)

 

昨日はわたしの前に座ったあなた

電話をいじり

髪を整え

性的には熟していることを見せつけたあなた

貧乏と熱愛中の

この部屋へ遊びに来て

 

すべてのやさしい男が

わたしの乳房のためだけに

移動し

電話し

走り抜けるならば

すごくうれしい

手を振ってやる

 

すべてのやさしい男たち

わたしの性器はもはやゆるい