melophobian

安川奈緒の現代詩手帖掲載詩などを写経のように書き写す。

「薬局でのくすぐりが偉大だった日」安川奈緒

「とりたてて悩ましくもなく、とりたててアイドルでもない」が700円ぐらいで売られていた 丁寧さなど軽蔑している 今日は誰とも口をきかない

 

屈強なほうの飼育員と階差数列を学ぶような嬉しい日々はそう簡単には来ないだろう、と思う 昨日はチラッと札束を見せる ということに本気で取り組んでいた 「取り除いて……起源の汚れを取り除いて……始まりはいつも汚れてる……」という声になりたかった

 

春巻仕様の服で 「纏えるときには風を纏え」ともうなくなってしまった言語で書き殴るのは出世魚と見まがう最高の俺 その一連の運動から逆巻くX このXが傾いだ十字架に見えてくるなら? 統合失調症のためにゆっくりと沐浴するだけだ

 

《You are so lucky, you are so lucky》は《Let them eat Prozac》と同じことを意味しているのだろうか それではあまりに厳しすぎはしないか ドキュメント「横槍」を見ていた 定期購読はそう続かなくて 駆け込み訴え(あいつらは、忘却の努力を怠っているにもかかわらず、病身を僭称してるんです……)に取って代わられたが 自分の過失と相手の過失を見極める無限剃毛はここから始まる

 

「ああ、朝だ、今日は膀胱神が来てくれるよ、俺はおまえを、そこで世界が不当に悶える空虚な湖面として、すなわち偽の患者として愛したのに……Zentralpark」

「いやです、私は豊穣な属性の束に戻るのです、Central park

 

誰の心にももう迫りたくないとカルテをつるつるに磨いた 「空ぶかしの生」と刻まれているある種の肌の上を 包帯とカイロが競って、競い合って隠しにかかるようだった だから私は 「檄文時代、離乳食時代、現代」と叫んで必要の万力を取りに行った 誰かが「農具でもいいんだ」と教えてくれた 全身から疑惑を滴らせながら教えてくれた

 

両面テープで処理しておくべき夏、覇権を争いたい 「箱庭療法で張り切るバカと遊ぼう」という企画 「フォッサマグナあたりまで食塩水を運ぼう」という企画 こんなのも夏かと楊貴妃を薄めて飲みながら、私は……「私を見るな、必ず後ろから犬のように殺してくれ、台風を反映し、胸の底の花街を購入し、決して何にも類似しないつもりだ」

 

小早川、小松川、死体より悪いが、ほぼ、ほぼ、愛している コッチコチにならなくてもいい 単発の番組だから 顎元の奇跡ぐらいだから 乳房を破裂させてツブツブ出しておけばいいから (このツブツブは、高貴なお人のいたらない便通に由来し……)そして私は食欲の乏しさに騒然となる界隈では必ず 「ポテト饅頭よ、この口を、この鼻を覆え」と言うだろう 恥ずべき面積への意志を記念するだろう だから どうかウェルギリウス 無料で案内してくれ この静かな雨の中を

 

「私を見るな、私は否定の接頭辞でしかなく、終電に乗った太陽」

「使い途のない否定性は、見つめられることを欲している ただ見守られることを いつか終わるまで温かく見守られて その視線に気づかない渦中の否定性は、見守られてあれ」

 

「やなもの見ないうちに、死にたいっすよ」との賢しい歓迎に体を「く」の字に折って喜んでいたら狂言豊作という罪名で捕まった でもあなた、その薬剤師という肩書きだけで話しかけないでほしいと思うから こんなふうに私に言ってくれないか「カモン、カモン今日は恩赦の見せびらかしの日です そのために、あなたは来た」、と