melophobian

安川奈緒の現代詩手帖掲載詩などを写経のように書き写す。

「深い森のような告白」安川奈緒

わたしの考えることはつつぬけだろう

わかりやすい顔

なんでも食べる

なにも話す必要はないだろう

 

めずらしく彼が饒舌になった

その露出への傾きとはうらはらに

千の葉が彼を覆い

守りぬくように思えた

つつぬけであるはずのわたしも

氷まで食べている

彼は自分に話すように水を飲んだ

 

氷も塩素で濁っているのだから

わたしがつつぬけだというのも間違いだろう

肩に付いた一枚の葉をはらって

外へ歩き出した

 

彼がわたしのことを友だちだと

思っていてくれればいいが

深くなってしまった森をかきわけ

彼にそう伝えようか

 

告白の枝が伸びわたり

互いの首を絞めあい

ちからなく

森のなかまたちに

互いに見分けのつかない小動物に

なってしまえるだろうか

 

かなこちゃんには

あなたがたよりも

自分のことを多く告白した

それはわたしが他人と自分のけじめを

うしなっているからだとしても

 

このように家庭教師先の親を

どなりちらして帰った